【私たちは生まれて最初の一息を吸い、大声で泣いてこの世界に自分の存在を知らせます。そして人生の最期に最後の息を吐きます。普段意識することはなくても、呼吸は常に行われています。実は、呼吸は私たちが思っている以上に重要なのです!】
呼吸の仕組み
通常の吸気では、肋間筋が収縮して肋骨を引き上げ、胸腔の容積が大きくなり、胸腔内の圧力が低下して外気との圧力差が生じます。このため、外部の空気が鼻を通じて加温・加湿され、咽頭、喉頭、気管、気管支を経由して最終的に肺胞に到達し、ガス交換が行われます。呼気の場合は逆で、肋間筋が弛緩して肋骨が下がり、胸腔容積が縮小して圧力が上昇し、肺内の空気が押し出されて二酸化炭素が排出されます。このような方法は「胸式呼吸」と呼ばれ、肺の上部3分の1程度のみが拡張します。胸式呼吸は吸気が浅いため、激しい運動や短時間で多量の酸素が必要な場合に適しています。しかし、長期間この方法のみで呼吸を行うと、肺の中下部の弾性が低下し、呼吸機能が低下して呼吸器系や肺疾患のリスクが高まる可能性があります。

そこで日常的に「腹式呼吸」を行うことが推奨されます。腹式呼吸では、横隔膜の動きが重要であり、吸気時に横隔膜を下げることで胸腔の拡張範囲を広げ、肺の奥深くまで空気を送り込むことができます。
腹式呼吸が必要な人々
一般の方々は、肺疾患の予防や肺機能の維持として腹式呼吸を日常的に取り入れると良いでしょう。また、以下の症状がある方は、腹式呼吸をトレーニングやリハビリの一環として行うことが勧められます:
- 痰が除去しづらい、または肺の拡張が不十分な場合
- 潜在的な気道浄化機能の低下
- ガス交換障害
- 呼吸筋の持久力不足

さらに、以下の疾患や状況がある方にも適しています:
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 間質性肺炎
- 肺線維症
- 長期間の人工呼吸器使用による離脱後の呼吸筋機能の低下

腹式呼吸のやり方
- 座位または膝を曲げた仰臥位の姿勢をとります。快適な姿勢を心がけ、胸部や腹部が自由に動けるようゆったりとした服装を着用します。
- 片手を胸の中央に、もう片方を肋骨の下に置き、動作が正しいかを確認します。
- 鼻からゆっくり息を吸い込み、腹部を最大限膨らませます。このとき、腹部に置いた手が上に持ち上がる感覚があります。
- 口から息を吐き、腹部が下がるのを感じながら、腹部の手で軽く内側と上に押すことで横隔膜を上げるのを助けます。
注意事項
- 成人の通常の呼吸回数は毎分10~12回で、吸気と呼気の比率はおおよそ1:2~1:4です。
- 1分間行い、その後2分間休みます。これを1日数回、1回30分程度繰り返します。
- 軽いめまいや不快感を感じた場合は、呼吸の長さや深さを調整するか、訓練を中止して通常の呼吸に戻り、休息してください。
- COPD患者の場合は、吐息を軽くゆっくりと行い、吐気流速を抑え、吐気時間を延ばすことが重要です。

腹式呼吸に「噘嘴吐気」を組み合わせることで、より効果的な呼吸トレーニングが可能です。噘嘴吐気の目的は、呼気時の気道内圧を維持し、肺の虚脱を防ぎ、気道をスムーズに保つことです。
噘嘴吐気のやり方
口を笛を吹くようにすぼめ、体を前傾させて太ももに寄せるか、または手を太ももや机に置いて支えます。この状態で6秒かけてゆっくり息を吐きます。
ゆっくり深く呼吸して肺を健康に
腹式呼吸は練習が必要ですが、横隔膜も他の筋肉と同様に、継続的なトレーニングによって収縮力を強化することができます。腹式呼吸法(いわゆる「深呼吸」)は、一般的な深呼吸に横隔膜の動きを加えたもので、空気の吸入量を効果的に増やします。腹式呼吸を日常的に10~20回行い、横隔膜の運動を習慣化することで呼吸の深さを徐々に増やし、最終的に腹式呼吸の割合を高めることができます。この方法で肺をより健康に保ちましょう。